2009年12月5日土曜日

米議会のFRB叩きが激化 高失業率、大型救済…世論の怒りを転嫁?

2009.12.3 21:13
米連邦準備制度理事会のバーナンキ議長(ロイター)米連邦準備制度理事会のバーナンキ議長(ロイター)

 米議会で米連邦準備制度理事会(FRB)の権限縮小や管理強化を図る法案提出が相次いでいる。ウォール街の大型救済や失業率上昇に対する国民の怒りを「FRBに転嫁しよう」という空気の表れとの見方が強い。来年1月に任期切れを迎えるバーナンキFRB議長は3日、自らの再任に関する上院公聴会で証言するが、厳しい追及を浴びそうだ。

 オバマ政権の進める金融規制改革をめぐり、FRBの役割や権限の見直しは最大の焦点のひとつとなっている。金融システムに影響を与える大規模金融機関の監督権限をFRBに一元化させたい米政府だが、最近の議会の動きは逆行している。

 象徴的な例が、下院金融サービス委員会で先月可決された、FRBに対する監査強化法案だ。自由主義者でFRB自体の廃止を唱えるポール議員(共和)は、政府監査院(GAO)の対象に政策金利を決定する金融政策も対象に加える案を提唱し、これに民主党議員も賛成に回った。

 FRBの権限縮小に向かう動きに対して、元FRB金融政策局長のビンセント・ラインハート氏は「FRBの金融政策決定を批判できる安易な仕組みをつくろうというもの」と批判。中央銀行の独立性を侵害する危険性を指摘する。

 上院でも先月、ドッド銀行委員会委員長(民主)がFRBから銀行監督権限を取り上げて、新設の金融監督機関に移す法案を提案した。ドッド氏は、FRBの監督行政の「大失敗」が金融危機を招いたと厳しく批判し、「金融政策に専念すべきだ」と訴える。

 民主・共和両党が対立する議会で、FRBたたきに限って超党派の動きが活発になっている背景には、保険大手のAIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)への緊急支援など、金融機関への大型救済に対する国民の怒りがある。

 FRBによる市場への大量資金供給といった金融緩和策は、金融市場の大混乱を沈静化することには成功した。ただ、ウォール街に巨額の税金を投入しながら、失業率が26年ぶりに10%を突破するなど、経済は明快な好転の兆しをみせていない。「(FRBは)経済へのいらだちと一体となった議会のスケープゴートになっている」(米紙ワシントン・ポスト)格好だ。

 バーナンキ議長は3日、上院銀行委員会の公聴会で証言。自身の再任の是非に加えて、FRBのあるべき姿について重大な局面に立たされる。先月末、議長はワシントン・ポストに寄稿し「金融を安定させ、インフレのない経済回復を促進するためには、FRBの力を弱めるのではなく、保持しなければならない」と訴えた。

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