2009年12月5日土曜日

ウーマンアイ 主婦の年金 夫の失業に保険料追い打ち

不況でサラリーマンの夫が失業や非正規労働に追い込まれた結果、それまで払わなくてよかった自分の年金保険料の支払いを求められる主婦らが増え、「負担が重い」と切実な声が上がっている。公的年金の「第3号被保険者」資格を失った人たちだ。

 3号はもともと、専業主婦が確実に年金をもらえるようにと導入されたが、不況下で資格を失った主婦らは、家計の収入減に加え新たな保険料負担という「追い打ち」に直面。年金制度が抱えるゆがみの一端が浮き彫りになった形だ。

 年金の被保険者は3通りで、1号は国民年金に加入する本人。2号は厚生年金や共済年金に加入する会社員や公務員本人。2号に扶養される専業主婦(夫)が3号だ。

 3号制度は1986年に始まり、自分で保険料を払わなくても、将来基礎年金を受給できる。だが夫が2号でなくなると妻も資格を失い、夫婦ともに国民年金に加入を求められる。

 小学校入学前の男の子が3人いる神戸市の主婦(40)の夫(43)は2007年に失業した。すぐに契約社員の仕事を見つけたが、厚生年金はなし。夫と自分のパートを合わせた約27万円の月収の半分は住宅ローンに消え、残りで生活するのがぎりぎりだ。2人分の国民年金保険料、月2万9320円は痛い。それでも将来が心配で08年度分の保険料は貯金を取り崩し、無理して一括納付した。が、09年4月からは払えていない。

 「保険料の減免制度は知っているが、将来の年金が減ると思うと、手続きに行く気になれなくて」。かといって「もし今保険料を払ったら、とてもじゃないけど暮らしていけない」。

 大阪府の主婦(36)も夫(36)が08年末に失業し、1号に。運送のアルバイトで夫が得る月収は13万~17万円と不安定だ。1歳の子どももおり、生活は苦しい。「なれるものなら3号に戻りたい」

 社会保険庁によると、3号被保険者は08年度末現在、1044万人いるが、年々減っている。晩婚化や働く女性の増加が主な原因だが「非正規労働で厚生年金に入れない夫が増えていることも要因の一つ」(同庁)という。

 女性の年金に詳しいお茶の水女子大の袖井孝子名誉教授は「世の中全体が苦しくなる中で、サラリーマンの夫に扶養される妻だけを優遇する3号制度は不公平。配偶者控除の廃止などとともに見直す時期だ」と指摘。

 民主党は政権公約に、職業ごとに分立した制度を一本化する「年金一元化」を盛り込んでおり、次の制度改正では、3号制度そのものがなくなる可能性もある。

 

 

◎立場により賛否に差

 年金の第3号被保険者制度を、女性たちはどう考えているのか。インターネットのコミュニティーサイト企画を手掛けるデジタルブティック(東京)が09年8月、ネット上で母親ら953人の意見を聞いたところ、当事者である3号の女性は88%が「制度に賛成」としたが、国民年金加入の1号では賛成が51%、厚生年金に加入する会社員など2号は同47%と、立場によって賛成の率が違った。

 賛成理由(複数回答)で多かったのは「専業主婦の生き方が不利にならないために必要」のほか「内助の功の評価」「子育てで働けない」など。

 反対理由では「不公平」が最多で、「一定の収入以上働くことができない」が続いた。

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