2009年12月1日火曜日

フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか(ダニエル・ピンク著・ダイヤモンド社・ISBN: 4478190445)

近年アメリカで注目されているフリーエージェントの議論は、日本ではまださほど議論されていない。我が国において学術的にフリーエージェントの議論を展開しているのは、今のところ玄田有史と三島重顕である。 玄田はDaniel Pink(2001)の邦訳である『フリーエージェント社会の到来』(ダイヤモンド社)に付録としてコメントを載せている。また、三島は(2006)フリーエージェントを以下のように定義している。定義:「正規雇用者として組織に所属することなく、他者による時間的、空間的、対人関係的、また職務内容的な制限を受けずに、本人の自由裁量に基づいて働くこと」(正社員と比較して相対的に)。

また、以下のように、三島(2006)は「能力」(十分に自活可能な経済的収入をもたらす専門的な知識や技能、または資本力、あるいはその両方を有すること)と「意図」(本人が自ら好んでフリーエージェントになったか否か)という2つの基準、ならびに「安定志向」と「やりがい志向」という副次的な基準から、フリーエージェントを4つに分類している。

「独立独歩型」:専門知識・技能といった能力があり、意図的にフリー・エージェントを選択したケース。やりがい志向の者が多いと思われる。しかし、専門知識を持たない安定志向の者でも、何らかの資本能力を持つならば独立できる。

「環境不遇型」:能力があるものの、正規社員となる機会に恵まれなかったため、非意図的にフリー・エージェントとなったケース。安定志向の者が多いと思われる。

「自由尊重型」:能力不足であるが、意図的にフリー・エージェントを選択したケース。能力を身につけて独立独歩型を目指すやりがい志向の者と、正社員を希望しながらも労働条件や将来性の悪化のため、意図的にフリー・エージェントを選択した安定志向の者とがある。

「不可避型」:能力不足かつ非意図的なフリー・エージェント。正社員を希望する安定志向の者が多いと思われる。

(資料出所:「フリー・エージェントの分類と動向 ―労働者側の視点から―」、三島重顕、『経済論叢』、第117巻 第1号、pp.34-55(2006))

0 件のコメント:

コメントを投稿